弓井茉那・担当回

まずは弓井さんの経歴が語られるところからスタートしました。

故・太田省吾が学科長を担当していた京都造形大への進学。ここでの経験から生まれた劇場という場所への関心。それから座・高円寺の劇場創造アカデミーへ。そこで触れた杉並区立というミッション、地域への還元、ボランティアへの参加、窓口や受皿の広さなど。

彼女の活動の三本柱は、現代演劇の俳優・演劇教育・乳幼児への演劇だそうです。

演劇は社会をどう切り取ってどう提示するかがポイントだとし、誰も取りこぼさないように受皿を設けることが大事だと弓井さんは語ります。さらにF/T14のプログラムだったソ・ヒョンソク『From the Sea』のツアーパフォーマンスに参加したことをきっかけに五感への興味が具体化。 五感・身体感覚・皮膚感のあるもの。こうした問題意識から、赤ちゃんや子供目を通して考えることへの興味が生まれたとのこと。赤ちゃんを含むことで見方が一気に増えるのでは?

ここで弓井さんが主宰する、乳幼児を観劇対象とするベイビードラマのシアターカンパニーBEBERICAに関する動画を観ることに。

最近、世界同時的に出てきたスモールサイズ、アンダーサイズと呼ばれる赤ちゃん向けの演劇ムーブメントの流れにBEBERICAもアクセスしています。これらはベイビーシアターとも言うそうな。赤ちゃんと親たちが楽しむ空間。メンバー一同、へーこんなものがあるのかと言ったリアクション。

クロード・レジ『室内』の経験。ゆっくり動く、歩く、人と人とのあいだにある粒子がグニュっとなった感じ・瞬間。演じているあいだ、地球の裏側にいる人の幸せ、全能感を感じる体験があった。心ではなく世界を感じる、言葉で言えない感覚、赤ちゃんも同じことを感じているのではないか?

続けてドイツでの経験、デュッセルドルフの公共劇場でのこと。現地のコミュニティーから漏れてしまっている日本人のコミュニティーへのアプローチ。またSTスポットの障害者施設でのWSのコーディネートなど。弓井さんの演劇経験は縦に横に駆け巡ります。

ここからペアで赤ちゃんの身体感覚を想像して動くワークへ。相手はその状態をコピーする。

本田「赤ちゃんの方が生きやすい、周りに気を使わなくていい、言葉にしなくていい感じ」

坂東「むずがりたくなる自分と大人の自分が制御する感じ、観察側の時は保護者モードが出そうになる」

弓井さんによると「やっている・やられている・観られている」の構造、それぞれに発見するものが違う。それぞれに視点でコミュニケーションを考えるきっかけになればいいなと。

今後の活動について、保育所を兼ねたアートスペースを準備中とのこと。これまで演出と作れる俳優を目指していたが、これから事業化できる俳優を考えているそうです。

〈プロデューサーの時代〉において阻害されがちな俳優、職能・生き方とは?弓井さんの言葉には、これから私たちに何ができるか、と言うことへの問いかけが含まれています。