内山茜・担当回

内山の担当回は身体にフォーカスを当てたものであった。内容としては、

  1. 自分の身体を把握する。

  2. 把握した身体やイメージを言葉にする。言葉は他者に手渡すことが可能なもの(伝えることができるもの)としてあり、身体の再生を実践する。

このように、前半部と後半部に分かれて進行し、そのゆるやかなつながりを保ちながらも、後半部が前半部を受けてくっきりと成立してゆくことに筆者は目から鱗だった。以下、詳細に書き進めていく。


◯はじまり

部屋の蛍光灯の明るさ、音源の響き具合をチェックする内山。部屋全体のうち、半分の蛍光灯を消して4人に声を掛けはじめた。窓からの日差しも少し柔らかくなってきて、19時に会はスタートされた。

ストレッチをする内山

ストレッチをする内山

1.自分の身体を把握する

前半はヨガ。観測していて、内山が頻繁に口にしていたのは「自分のからだを思い出して(把握して)ください」というもの。自分のからだを自分で把握することは後半部で更に深く掘り下げられることとなったが、この時はまだ、感覚によって、からだの不自由さ、息の浸透、外部の環境を把握することに主眼が置かれた。

仰向けになり、徐々に部屋の電気が消えていく。リラックス音楽が流れる静的な時間。仰向けに慣れてきた頃に、指先から感覚を戻して、ゆっくり横向けになってみましょうとの指示が飛ぶ。

あぐらのポーズのヨガをする参加者たち

あぐらのポーズのヨガをする参加者たち

正直、会の前半は鹿島が言っていた「わたしにとっての演劇を語る」の要素をなかなか見い出せずにいたが、それは、ヨガ実践の印象が強かったからかもしれない。筆者は内山にとって身体が演劇ということと密接に関係していることをしみじみ体感していた。しかしながら、ダンス、舞踏、演劇、いろいろな身体を扱う表現がある中での、内山にとっての演劇の身体とは一体どのようなものなのだろうか。

2.把握した身体やイメージを言葉にし、身体の再演を試みる

後半は、「空間と時間を噛み締めながら歩いてください」という内山の言葉ではじまった。私はここに演劇の身体性を見た。というのも、演劇を成立させる(考える)ための重要事項として空間・時間の二つがあると考えるからだ。

内山は参加者に部屋の端から端をゆっくり歩かせて、最後に歩くのにかかった時間を告げる。その後、歩いた時、ヨガをした時に感じたことや、思い浮かべたことを紙に書き出し、客観的に自身の身体を捉えさせることを促し、再度歩かせる。

三度目には、その紙をお互いに交換し、他者の身体を感じる。感じることによって、自身の身体の再演を目指す。

一歩一歩確かめながら歩く参加者たち

一歩一歩確かめながら歩く参加者たち

内山は演劇における身体を普遍的な形で現前に示した。環境を感じながら自身の身体へと還元していくことは俳優にとって重要事項だろう。窓からは時に外国語が、時に道路を通り過ぎる車やバイクの音が聞こえてくる。周りの環境に感覚を研ぎ澄ましながら、自身の身体を把握していく作業は簡単なことではない。演劇の身体それ自身を考えているように見えたが、演劇の身体の詳細を見つめ直していくことはこれから可能なのだろうか。(宮﨑)


【内山 茜 Akane Uchiyama】

舞踊家/俳優/演出/振付/映像制作など、分野を問わず活動する。2018年に第一子を出産し、以降子育てと創作の両立のための実践をおこなう。 立教大学大学院現代心理学研究科映像身体学専攻博士前期課程修了。芸術総合高校舞台芸術科卒。人肌くらげ代表。