飛田ニケ 宮崎玲奈・担当回

「〈Ship〉Ⅲ」3日目は飛田ニケ(とびたにけ)さんと連れられてきた?宮﨑玲奈(みやざきれな)さんによるワークショップから。

ゴロゴロするひとびと

ゴロゴロするひとびと

「ゴロゴロしてください。体は伸ばしても伸ばさなくてもいいので。」とニケさんが言い、主催の2人を含めて、(黒ビニで太陽光を遮るなどして)薄暗くされた部屋の中で全員寝転がったりストレッチしたりし始めました。 そのうち唐突にニケさんは「小林さん、昨日何食べました?」と問い始めます。そのあとしばらく会話が続き、沈黙になったところでニケさんは「この集まりについて話します」と言いました。そして、この集まりのことを説明していき、「(主催者たちがこれまでに行っていた活動を含む)前回までにやられたことは引き継ぐし、〈Ship〉で昨日までやられていたことも引き継ぐし、今日やることも引き継がれると良いと思っている」と話します。

(ちなみにここで宮﨑さんは爆睡していた)

寝てしまった宮﨑さん

寝てしまった宮﨑さん

さらにいくつか話したあと、彼は依田さんに「最近悩みとかありますか?」と問いました。

依田さんの悩みは「体調が悪いわけではないのに楽しくない。楽しくないのがダメというより自分の中の良い状態、理想の状態があってそれが得られてないと申し訳なさみたいなものを感じる」ということから、理想の状態とは何かという話になります。依田さんにとっての理想の状態とは「感動したものを受け入れる(側に置いておける)余裕のある状態」だそうで、また生活において余裕のないときは「普段気にせず5個やれていたことが(やらないと死ぬことを自然と選び出して)1個しかやれなくなる」のだそう。そこから議論の末、「私にとって何が必要かなど数えたりしないで良いのが理想の状態」ということになります。また、キサラさんが先日の「私にとっての演劇」で話していたことを持ち出して、彼にとっての俳優の理想の状態が何かを問うと、「稽古の段階で意識してやっていたことが舞台上で意識せずともやれる状態」だそうで、これは依田さんの生活における理想の状態と近いと言えることになります。そこから議論の末、「理想の状態=気にしない状態」とここで定義することになりました。

宮﨑さんとニケさん

宮﨑さんとニケさん

そこからニケさんたちが「前回の集まり」から引き継いだ論点である「時間を区切ること」の話題となり、ここからも結局自分が気にしているか気にしていないか(気になるか気にならないか)が行動に大きく影響するということを導き出します。

さらにニケさんは俳優たちに「”私今何してるんだろう”は重要か重要でないか」と問います。

結局そう考えてしまっている時点で気にしていないかもしれないけれど何かはしていて、「”何してるんだろう”=本当は何かはしているのに何もしていないのではないかと気にしてしまう状態」だという方向で話は進みます。そしてニケさんは、「何してるんだろう」と思ったときは「してる」ことを所有できておらず、何かはしているけれど、それは気にしていない次元にあって、つまり何かによって「させられている」状態だと言えると話しました。

そうして体をリラックスしながらの議論は時間がきて終了しました。

最後までゴロゴロしたひとびと

最後までゴロゴロしたひとびと

おそらくこのワークショップのキーワードは「無視(気にしない)」 議論の核であった「気にする・気にしない(する・させられる)」から、色々なものを無視して「(何かを)している」ことに意識は向けられました。

そして、(半ば議論の進め方が強引だった節はあるけれど)ニケさんが言葉尻をとらえていくことで、如何に言葉の正確な意味を無視して発語しているか、どれくらい自覚的に言葉を発しているかということも浮き彫りになりました。

また、ニケさんは記録チームとしても参加しているので、先日までの「私にとっての演劇」に見受けられた、俳優たちの「無視」を含んだエピソードを踏まえていたように思います。(参考 各俳優担当回) それらをどう受け止めるかを考え続けることは、俳優の大きな仕事の1つだと私は思いました。

まるで悠久の時間が流れているような(区切られることのない時間のような)、何かをやらなくても許されるような(「してる」ことを所有していなくても許されるような)、そういう空間でした。宮﨑さんの束の間の眠りもその1つの要素だったんだなと思います。

記録チーム 馬淵悠美


【飛田 ニケ Nike Tobita】 1995年神奈川県生まれ・在住。大学生。劇場創造アカデミー修了。2017年ごろから「むなしさ」の実践を通じて、演劇の活動を立てる。 https://emptiness0317archive.tumblr.com/